第4話 『ソウルエッジ(後編)』
『...何言ってるんだ。メグミ。
アキラとタクミが死んだなんて...嘘なんだろ?』
僕は弱々しく訊いた。
『ごめんなさい...本当なのよ。』
メグミは、下を向いて答えた。
『そんな事より、お前を‘ソウルエッジ’に所属させる事が
数日前に行われた上層部の会議で決定した。
俺達と同じように訓練を受け、すぐ実戦に出てもらう。』
『そんな事より...!?』
『あぁ?‘死んだ人間の事なんかより’とでも
言い直そうか?』
リュウが声を荒げる。
『リュウ。そんな言い方...』
『あいつらとは、小さい頃から
ずっと一緒だったんだ。それを...』
僕はベッドから起き上がると
怒りにまかせて、リュウの胸倉を掴んだ。
『てめぇ、この手を離しやがれ。さもねぇと...』
『ごめんね。マサキ。』
ズシンッ!!
僕の腕をメグミが掴んだと思ったら
一瞬で、硬い床に叩きつけられていた。
激しい痛みで息がつまる。
『やるねぇ。メグミ。』
『仕方ないでしょ。貴方に任せたら
マサキを殺しかねないもの。』
『まぁな。それよりも、さっきの続きだ。』
『ソウルエッジに所属するために...
お前には、外部との繋がりをすべて絶ってもらう。』
『どういう意味なんだ?』と僕はリュウに訊き返した。
『このソウルエッジの関連施設から一歩も出るな。
と言うことだ。当然、外部と連絡もするなよ。』
『待ってくれ。学校や家はどうするんだ?』
僕の言葉を聞いて、二人が顔を見合わせる。
『お前はもう死んでいるんだ。社会的にはな。』
『何を言って...』
『この前の戦闘...表向きには
地震によるビルの倒壊となっているが
お前は、それに巻き込まれて死んだ事になっている。』
『私と同じようにね。』
『!?』
そう。僕がメグミを見て驚いたのは
彼女が幼馴染だったからじゃない。
僕が知っているメグミは、6年前に事故で死んだんだ。
『私達の存在を一般人に
知られるわけにはいかないから...』
白い天井を見上げながら、僕は呟いた。
『父さんが小さい頃に死んで...それから
ずっと...ずっと母さんと二人で生きてきたんだ。
だから...』
『母さんに、もう一度会わせて欲しい...』
『........』
誰も何も喋らない。重い沈黙の時間が流れた。
『....チッ』
リュウは、舌打ちしながら、メグミの方を向き
『メグミ...悪いが、この馬鹿のために
街に行ってくれないか?』と遠慮がちに言った
『そんな危険な事...正気なの!?リュウ。』
『あぁ。こいつに現実を思い知らせてやってくれ。』
少しの間、沈黙が続いた。やっとメグミは口を開き
『そう...そういう事。
本当に嫌な役をやらせるのね...』
と苛立ちながら言った。
その言葉を聞いたリュウは
『すまない。』
とだけ言うと、それ以上、何も言わなかった。
この時の僕は
『ソウルエッジに所属する。』と言う言葉の持つ
本当の意味を、まだ知らなかったんだ...
(第5話『遠い背中』 に続く)
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